お母さんのコーヒー豆 アカ・アマ・コーヒー
タイ北部の観光地チェンマイ。ここに26歳の若者が経営する小さな小さなカフェがあります。若者の名前はリーさん。アカ族(山岳少数民族)の若者です。彼が生まれ育ったアカ族の村は隣県のチェンラーイの山奥にあり、彼の母親はコーヒー豆栽培をしています。
はるか昔、北タイの国境地帯“ゴールデントライアングル”ではケシが栽培されていました。タイ王室によって1988年に始められた、ケシに代わる作物栽培奨励の「ドーイトゥン・プロジェクト」の一つにコーヒー豆栽培があり、今やタイのコーヒー豆はベトナムやインドネシアに負けない味で知られています。
リーさんがいれるコーヒーは彼のお母さんが栽培した「タイ産アラビカ種のコーヒー豆」なんです。そしてカフェの名前にもなり、コーヒー豆ブランドにもなっているのは「Akha Ama Coffee」。アカ語で「アカ族のお母さんのコーヒー」という意味です。
タイ北部には標高600〜900m以上の山地が多く存在し、さまざまな民族背景を持った人々が暮らしています。アカ族はその中の一民族で独自の言語、生活様式などの文化を持っています。彼らは100年ほど前より中国西南部から移動を繰り返してきました。
現在タイに暮らす多くのアカはキリスト教信仰に改宗していますが、Akha Ama Coffeeの農園があるメージャンターイ村では、先祖崇拝とアミニズムを信仰しています。
標高1300メートルの山中で有機栽培されるコーヒー。その味はコクがあり上品な味わいで知られ、2010年、2011年と続いて世界的なコーヒーイベントWarld cup tasters Championshipに最高の条件のコーヒー農園の一つと評価されたほど。
2006年にチェンマイの大学を優秀な成績で卒業した彼はお母さんのコーヒー豆を売ること、そしてチェンラーイでコーヒー豆栽培を広める活動をスタートさせます。
それから5年。今や「アカ族のお母さんのコーヒー豆」はチェンマイの有名スーパーマーケットや市場で売られる他、今後の海外輸出に向けて準備中です。
また、彼は徐々に活動の幅を広げ、北タイの観光拠点であるチェンマイに集まる世界中からの観光客や長期滞在者をチェンラーイのお母さんが待つ村に連れて行って、コーヒー豆栽培や山岳少数民族の暮らしを体験できる「コーヒー・ジャーニー」を主催するなど、その活動はチェンマイを中心とした北タイ社会で話題になりつつあります。
写真1 リーさんのカフェ
写真2 まだあどけない表情のリーさん
写真3 リーさんとお母さん
写真4 定期的に開かれるコーヒー・ジャーニー
(文: 城戸可路 写真:Akha Ama Coffee提供)
( タイ チェンマイ)