市場の犬たち
チャオプラヤー川とパサック川に囲まれた“島内”にあるアユタヤ遺跡公園は、今回の洪水で、約1ヶ月のあいだ浸水していた。壁に残る水の跡を見ていると、だいたい1m以上浸水していたようである。
島内から水を出す作業には1週間くらいかかったようだが、意外と早かったのはポンプでの排水と島内に排水ができる運河が整っていた事によると思う。
確かに大災害であったが、ゆっくりと流れてくる水を早く海に吐き出すことは可能だと思う。
今年は油断していたようなので、来年から知恵と技術を使えばなんとかなるという気がする。
さて生き物たちは洪水のあいだどうしていたのだろうか。
不思議なのは市場にいた犬たちが、だいたい元通りの場所に戻ってきたことである。
犬たちは水に追われて浸水していない屋根や土手に上がったのだと思うが、そこに住む人達がえさをやっていたか、もしくは船でえさを配る人たちがいた、ということだと思う。
日本の常識はここでも通用せず、多くの犬は放し飼いで、誰が飼い主かというのがはっきりしない関係だ。
またどこでも見かけたアリを見かけなくなった。
ここ1週間ほど(11月半ば)、アリがいそうな所で地面を見ているが、見てまわる範囲にいるアリは2−3匹と数えるほどで、減っているのは事実だと思う。
しかしタイのことわざにあるように
「水がひけばアリが魚を食べ、洪水の時は魚がアリを食べる」
で、地下深くに潜っているだけで、いずれ出てきて魚を食べるのかも知れない。
写真・文:森田次郎