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ラオスでバスの旅はタイヘンA

出発と同時に雨が降り出した。そうこれは私の涙雨…、なんて感傷的になっている場合じゃない。ビエンチャンからルアンパバーンまではいくつもの山を越え峠を抜けていく旅、雨季のこの時期は大雨になると崖崩れの危険が増すのだ。さらに不安にさせるのは「このルートはほんの数年前まで山賊が出たらしい」という噂。実際2007年2月に途中のバンビエンあたりで、反政府集団とラオス軍の武力衝突があったらしい。

 さて、出発して1時間が経過した頃、突然バスが停まった。周囲に建物などない峠道だ。運転手や数人の乗客が小雨の中を茂みの方に走って行き用をたしている。「オシッコタイム」なのだが、ラオス人女性たちも同様に走っていく。見ているとファランの若い女性は明らかに困り果てた様子で、どうしようか悩んでいる。諦めてバスに戻る者、意を決してトイレットペーパーを握り締めて茂みに入っていく者。涙なくしては見られないドラマがそこにあった。たかがオシッコだが自然の欲求と人間の尊厳との闘いなのだ。

 約10分間の休息の後、バスは出発。途中で雨が上がり空は晴れ上がった。座席がひどく窮屈なのは相変わらずだが、気分は少しばかり明るくなる。そしてビエンチャンを出発して約4時間後に昼食休憩となった。そこはレストラン、売店が入っている建物で、乗車時に貰った座席番号の紙を見せれば無料で食事がもらえる。30分が過ぎ、バスのクラクションを合図に乗客が乗り込んで再び出発である。この辺りで誰か降りれば席を移れるのにと期待したが無駄であった。乗り込む際に「エコノミークラス症候群」にならないか本気で心配になり、ドライバーに「あと何時間でルアンパバーンに着きますか?」と聞いたが、「そんなの行って見なけりゃ判らないよ」というつれない返事。まったくサービス精神の欠片もない。

 結局、途中でもう一度「オシッコタイム」があった以外、バスは山道をひた走り、ルアンパバーンに到着したのは午後6時過ぎ。出発からゆうに10時間を経過していた。さらにルアンパバーンのバス乗り場は町の中心から離れているので乗り合いタクシーでメインストリートまで行き、そこからさらにその夜泊まるゲストハウスまで行かねばならず、疲れ果ててチェックインした直後に大雨になってしまうというオマケつき。何とも運の悪いバス旅行になってしまった。

 普通はこんなひどい目に遭えば早く忘れ去りたいと思うものだが、正直言って実はそうでもない。ほとんど身動きできない狭い座席には閉口したが、ラオスの山道を走りながら見た素晴らしい景色を忘れることができない。雨季だからこその深い緑、時折道端に出現する山岳少数民族の村とそこで暮らす人々。道路わきの水場で夕方の水浴びをする母親と子供たちは皆楽しそうに笑っている。

もうひとつ、ビエンチャンで買ったカオチー・パテー(サンドウィッチ)も素晴らしく美味しかった(カオチー・パテーは作るときに炭火で炙るビエンチャン式は絶品だが、なぜか他では炙らないのでイマイチ)。

 機会があれば今度は出発の1時間以上前にバス乗り場へ行こうと心に決めている。もちろんカオチー・パテーを持って。



(写真1)昼食タイムのレストラン

(写真2)車窓からの素晴らしい景色  

(写真3)カオチー・パテーがあったから苦行に耐えられた?

文・写真: 城戸可路