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煙がのぼる村

ベトナムの陶器といえばバチャン村のバチャン焼きが人々に知られている。
10数年前あたりまでのバチャンの村は、焼き物工房という工房の壁に一面に牛の糞が大型煎餅のように貼り付けられていて臭かった。これを乾燥させ陶器を焼くための窯の燃料にしていたのだ。村には何本もの高い煙突が立ち、いつも煙を吐いていたが、それはそれで如何にも焼き物の村らしい風情があった。
ところが今では、殆どがガスバーナーにかわってしまい、煙突からの煙もなくなり、工房も村も観光化し過ぎて昔の風情がなくなってしまった。

人々からは余り知られていないが、ベトナムには、もう一つ伝統的な陶器を作る村がある。
ハノイから東へ約40キロ(ハロン湾の途中)にあるフーラン村というのがそれで、この村は約900年前から陶器を作っていた伝統ある村なのだが、作るものがお棺などを中心とした地味なものであったため、近年バチャンなどに押されすっかり寂れていた。
そこに7年ほど前、ハノイ大学陶芸学科を卒業した村の若者が村に戻ってきて、従来の伝統的陶器の上に現代的かつ独創的なデザインを用い、フーラン焼きのイメージを一辺させた。
現在、彼は独自の工房を営み、陶芸に興味がある者、陶器家を志す村の若者を集め指導し、さらに昔からある村の工房をも指導してフーラン焼きの復興に情熱をかけている。

村は、バチャンなどとは異なり全く観光化されていない。年季の入ったレンガの壁。窯用の薪が村の至る所に積み上げられている光景。煙突からは毎日もくもくと白い煙が澄んだ青空に舞い上がり、周囲に広がる田園は牧歌的で実に素晴らしく風情がある。



写真・文: 面高昌男