寅年生まれの為のお寺
北タイでは干支(十二支)を祭った寺が決められていて、一生に一度でも自分の干支の寺へ参拝すれば大きな徳を積めると言われている。私は寅年生まれなのでプレー県にある寺だと聞いてはいたが、タイ正月のソンクラーンを前に「新年といえば初詣!」とばかりにプレー県へ出かけ、ワット・プラタート・チョーヘーで開運祈願をしてきた。プレー市街地から国道1022号線で約8km、大きな門をくぐり広い駐車場に車を停めるとその先に本堂へ上る石段が見える。近くにあった観光客向けの案内パネルを読むと「この寺は14世紀のリタイ王(スコータイ王朝)の時代に建立された。金箔が貼られたチェンセーン様式の仏舎利塔は、幅10mの四角形の土台の上に33mの高さがある。仏舎利塔はブッダの髪の毛(一説には骨とも)を納めるために建てられ、チョーヘーという名前は当時シーサンパンナ(西双版納※注1)から持ち込まれ、塔を包むために使われた高品質の織物に由来する」と説明されている。
長い石段を上り本堂へ入ると黄金に輝く仏像が正面に鎮座していた。荘厳な空気に包まれ、自然と背筋がピンと伸びる。大げさだが自分のためのお寺のような気がしてなんだが嬉しくなった。意味も無く「ありがたや〜ありがたや〜」と呟いてみる。仏像を拝んでから横の売店でお守りとロウソクなどを買い求め、仏舎利塔へ向かうと仏舎利塔は修復工事中であった。これ幸いにと少額だが寄付をしてタンブン(徳を積む)することにした。タンブンの後は教えられた通りに「花・ロウソク・線香」を両手で持ち、顔の前で拝むようなスタイルでいそいそと塔の周囲を祈りながら歩く。塔の周囲を取り囲むように配置された「虎」の像が、塔を外敵や災難から守っているかのようだ。3周目が終わるとロウソクと線香に火を点けて花とともに決められた場所に供えて無事開運祈願を終えた。
ちなみにここでは毎年3月に「チョーヘー仏舎利塔儀式」という仏教儀式がある。大きな布で仏舎利塔を覆い、ラーンナーの伝統的な衣装を着た人々がパレードを行う。期間中は毎晩遅くまで宴が催され、最終日は僧侶に托鉢したあと仏舎利塔の周囲をロウソクを持って回るとのこと。是非とも来年また儀式の頃に訪れ、参加してみたいと思った。「寅年生まれ」限定ではあるが、お勧めである。
その他の皆さんのために「十二支の寺」を以下に紹介する。戌年生まれの方は「天国」ではなくワット・プラタート・ゲートガーラームに行って欲しい。
(注1)シーサンパンナは、ラーンサーン、ラーンナー等と並ぶ、タイ系民族による「ムアン(国家)」の一つ。1180年に建国されたタイ族による国家だったが13世紀にはモンゴル、14世紀には中国(明)、15世紀にはビルマ(タウングー)に服属した。現在は雲南省の「西双版納(シーサンパンナ)タイ族自治州」となっている。その名前の由来はタイ語の「12の千の田(シップソーン・パン・ナー)から来たものだが、日本では「西双版納」の雲南方言を経由したシーサンパンナまたはシーサパンナなどが使われている。
北タイ・干支の寺
1.鼠(子)ワット・プラタート・ジョームトーン(チェンマイ県)
2.牛(丑)ワット・プラタート・ランパーン・ルアン(ランパーン県)
3.虎(寅)ワット・プラタート・チョーヘー(プレー県)
4.兎(卯)ワット・プラタート・チェーヘーン寺(ナーン県)
5.龍(辰)ワット・プラシン(チェンマイ市)
6.蛇(巳)プッタカヤ・チョンプータウィープ(インド)
もしくはワット・チェットヨート(チェンマイ県)
7.馬(午)ワット・プラタート・シュエダゴーン(ミャンマー)
もしくはワット・プラタート・バーンターク(ターク県)
8.羊(未)ワット・プラタート・ドーイステープ(チェンマイ市)
9.猿(申)ワット・プラタート・ナコンパノム(ナコンパノム県)
10.鶏(酉)ワット・プラタート・ハリプンチャイ(ランプーン県)
11.犬(戌)ワット・プラタート・ゲッゲーオジュラーマニー(天国)
もしくはワット・プラタート・インクウェーン寺(ミャンマー)
もしくはワット・プラタート・ゲートガーラーム(チェンマイ県)
12.豚(亥)※ラーンナーでは象
ワット・プラタート・ドーイトゥン(チェンラーイ県)
(写真1)美しい仏像がある本堂
(写真2)階段横に虎が。虎か?これ
(写真3)仏舎利塔を守る虎は愛嬌がある
文・写真: 城戸可路