ラフレシアの花と植民地建設者ラッフルズ
「ラフレシア」という花をご存知だろうか。東南アジアにだけ生息する世界最大の寄生植物(他の植物に寄生し栄養分を吸収して育つ)で、咲いているのはたった1週間程度、開花している間に非常に強い臭いをだすことでも知られている。それは文献などには腐肉の臭いと書かれているが、現地の人々には「人間が死んだときの臭い」などと言い伝えられている。この「ラフレシア」という名前はどこから付けられたのか、インターネットや百科事典、東南アジア関連の書籍をあれこれ見てみるとちょっと面白い歴史物語に行き当たった。イギリス人植民地建設者でシンガポールの創設者、かの有名なラッフルズホテルの名前にもなった、トーマス・スタンフォード・ラッフルズに繋がっていたのである。
ラッフルズは植民地建設の傍ら植物学や動物学などに大いに興味を持ち、ジャングルの調査を積極的に行った。植物学者のアーノルド博士と共に発見したラフレシア品種の最大のものは二人の名前を取って「ラフレシア・アーノルディー」と名づけられた。
この「ラフレシア・アーノルディー」、スマトラ島とボルネオ島に生息している。スマトラ島のパダン国際空港から車でブキティンギという町へ向かい、そこからラフレシアが咲いている(かもしれない)「サゴ山」に入ることになった。しかしこの山は観光客が勝手に入ることは許されていない。事前にインドネシア政府の許可、森林局の許可、地元警察の許可を得て、さらにこの山の登山口にある村の村長にも挨拶して初めて入山が許された。
山に入る際は地元の山岳ガイドが2名、そのアシスタントらしい若者が数名同行し我々「ラフレシア探検隊(?)」を助けてくれた。雨季は蚊やヒル、毒がある虫や蛇が四方八方から襲い掛かってくるという話を聞いたが、乾季であれば晴れてさえいればその心配も少ない。とはいえ、ここはジャングルの中である。観光地化された場所ではないので道などは無く、山岳ガイドの案内のまま獣道をひたすら歩くことになる。そこは日本人の感覚からすれば「密林」そのものなのだが、ガイドに言わせると「ちょっとした丘」なのだそう…。
山に入って途中で昼食の小休止、その後さらに歩き続けて約4時間の探検の結果、見事に咲いたラフレシアの花を見ることができた。
ところで、ラフレシアは臭かったかって? そりゃもう、脳天にガツーンとくる強烈な臭いだったとだけ報告しておこう。
(写真1)これが「ラフレシア」花の直径は約70cmくらい
文・写真: 城戸可路