海の民の村
ベトナムのハロン湾の景勝は世界文化遺産になっている。
港から船に乗り、まるで海の桂林を思わせる絶景を望みながら静かな海を約2時間半も走り、両側にあらわれた一際大きい岩山の間を抜け、さらに船を進めると突然、別の世界を一望することになる。
岩山にへばり付くように並ぶ浮き家は、昔から漁師を生業とする「海の民」の移住区なのだ。
そびえる岩山が、風を、波を防ぐその入り江は穏やかで静かだ。それは、まるで昔みた映画にあった地中海の海賊の隠れ住処を思わせるものだ。
浮き舟は漁船に引かれ好きな時に、好きな処へ移り住める。そして晴れた日の夕刻は、これこそまさに世界遺産だ。
写真・文:面高昌男