屋台が集まっているエリアの中で、他の一団とは違って、頭一つ低いところがあります。
そこには、山盛りになった野菜のみじん切りと、わざわざレンゲで麺を一所懸命食べている人たちがいます。
これがカレーそうめん、「カノムヂーン・ナムヤー」であります。
タイのリゾート、プーケットでは、これを朝食にするのが一般的です。
なぜ、他の屋台と比べて食べる位置が低いのか?
昔は天秤棒に担いで売っていたため、売り子が地べたにしゃがみこむ格好になり、応じてお客さんも同じ高さで食べることになって今に至るそうです。
どれくらい低いかというと、お風呂の椅子ありますね、あれの半分くらい。
足の長い人は辛いかもしれません。
このカノムヂーン、直訳すると「中国のお菓子」という意味になります。
名前の由来には諸説あって、この料理を発明したのはタイ人ですが、麺は中国から伝来したものですから「中国風お菓子みたいなもんだ」というのが一つ。
もう一つは中国人が米粉を材料に麺を作っているときに米粉が発酵してしまい、中国人はそれを捨てたけど、タイ人はそれを捨てずに麺を作った。
だから中国という言葉が入るとの話。どっちも本当っぽいですけどね。
カノムヂーンの原料は、米粉です。
上記のようにある日、採れ過ぎたお米が発酵してしまい、捨てようとしたけれど量が多くてもったいない。
誰かがそれを粉にして練り、麺の状態にして茹でて食べてみたところ、結構イケるということがわかり、そのまま麺として売られることになりました。
この麺自体の匂いをかぐと、少し酸味がかったような、独特の発酵臭がします。
保存が利かないので、作ったらすぐに売って、すぐに食べるという感じです。
麺は、ぐらぐらと煮立った大釜の中に、どろどろに練った米粉を網杓子に押し出して作られます。
茹でられたあとは、少しずつ塊にまとめられ、バナナの葉を敷いた籠にきれいに並べます。
さて、次はカレーそうめんのカレーの部分です。
グリーンカレーをかけたり、トムヤムクンをかけても美味しく頂けますが、魚カレーが代表的です。
なぜかご飯のおかずにはならず、純粋にカノムヂーンのみに使われるこのカレーは、カノムヂーンができた(約六百年ほど前)頃に同時に作られたそう。
川魚をすり身にして、各種香辛料とココナッツミルクと合わせたものが一番有名です。
魚でできたつみれを浮かせてでき上がり。
皿に盛られた麺に魚カレー汁をドバッとぶっかけます。ここで、いろいろな野菜のみじん切りが登場。
各々自分の好きな量の野菜を皿に放り込みます。ちなみに用意されている野菜は、キャベツの千切り、高菜の漬物の千切り、もやし、コリアンダー、いんげん、バナナの花のつぼみ、バジルの葉。
こうなると、麺が主役なのか、野菜が主役なのかよくわかりません。
レンゲを使って、麺をぶちぶちと細かく切って食べます。
この料理だけは日本のご家庭で作るのは難しいと思いますので、タイにいらした際には、みんなで腰を低くして屋台でこのカノムヂーンをすすってみましょう。
写真・文:おもだか まさし