メッカ巡礼の人々
その日、首都ジャカルタからカリマンタン島のバンジャルマシンへ向かう飛行機は珍しく満席だった。
乗客は大半が年配者で疲れきった様子だが、なぜだかどの顔も幸せそうな微笑であふれている。空港に到着して手荷物受取所へ行くと何やら液体が入ったポリタンクが次々とベルトコンベアーで運ばれてきた。
訊くと彼らはサウジアラビアのメッカ(近年はマッカとも呼ぶ)へ巡礼に行ったイスラム教徒たちで、ポリタンクには神聖な水が入っているという。
ムスリムならば一生に一度は果たすべき義務とされ、メッカへ巡礼に行くことを誰もが夢見る。
しかし皆が夢を叶えられるわけではない。家族や親戚がお金を出し合い、時には借金までして巡礼の費用を捻出する。
だからこそ、夢を叶えた人々と出迎えの家族友人等は涙を流しながら再会を喜び抱き合うのだ。
(文・写真:城戸可路)
( インドネシア バンジャルマシン 2010年4月)