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ドンダイ漁

人間の営みには想像もつかないびっくりするような世界がある。
チベットのタングラ山脈に源を発するメコン川は中国、ミヤンマー、ラオス、タイ、カンボジアそしてベトナムのメコンデルタと延々4千4百25キロを流れ南シナ海に注ぐ。
その河口と言っても大海にベトナム語でドンダイ漁と呼ばれる漁法がある。

水の中に長い竹竿を7、8メートル間隔で差込み、同じく長い竹竿を横に渡す。
その距離は端から端までざっと200メートルから300メートルはある。
そこに大きな漁網を横一杯に張る。
潮が満ちると海水とともに小魚が河口に流れ込む。
その潮が引くときメコン川の水とともにその小魚が流され戻ってくる。
張られた漁網を海水に垂らすと小魚がどっと網の中に流れ込む。
その収穫を取りにやって来た漁船の男達と共に小魚で膨らみ重くなった網を引き上げ、船底を一杯に満たす。死にもの狂いの凄い作業が1時間近く続く。

その作業にたずさわる男達は一本の竹竿の上に作られた鳩小屋のような小屋で炊事をし、寝るという生活を10日間も続け、交代が来ると陸に上がる。
風も吹き雨も降る、日照りが続く日もある。
何ともすさまじいというか、驚きの世界だ。

(ベトナム メコンデルタ 2004年)

写真・文: Mac