視る
或る日の早朝、我々は両側を森に囲まれたオフロードをベトナムとの国境に向け移動中だった。やがて広く開けた小高い丘にさしかかったとき、前方にアメリカ開拓時代を思わせる丸太を組み合わせて作られた大型のハットが眼に入った。食事ができるのではないかと思い車を止め中に入ったが、一瞬足が止まった。
そこには、入ってきた我々異邦人にも眼もくれず、じっと前方を食い入るように見つめる男たちの顔があったのだ。むきだしの土の上に様々な形をしたテーブルと椅子が雑然と並ぶ、そこは女性の姿が全くない男たちの世界だった。ふと振り返ると18インチぐらいの大きさのテレビの画面はサッカーのワールドカップ戦の最中だった。
( カンボジア モンドルキリ セン・モノロム 2008年1月)