殺戮の野(キリングフィールド)
以前、ポル・ポト政権下のプノンペンで政治犯を収容・尋問(拷問)したトゥール・スレンについて書いたが、(アジアの町から村からバックナンバーhttp://www.aps.co.th/a_from/)そのトゥールスレンに付属する処刑場として造られたのが市内から約15キロ離れたチュンエクにあるキリングフィールド(The Killing Fields、Choeung Ek Memorials)だ。1984年の米アカデミー賞で助演男優賞・編集賞・撮影賞を受賞した映画『キリングフィールド』をご覧になった方も多いと思う。
クメール・ルージュの秘密警察である「サンテバル」は、知識人・伝統文化継承者・教師などを反革命的な者と見なして次々と殺害した。後には、クメール・ルージュの地方機関や事業所の幹部までもが反乱の恐れ有りとして殺害されていった。これら多数のカンボジア人が殺害された刑場が、現在のカンボジア各地で「キリング・フィールド」と呼ばれている場所である。〜Wikipediaより転載〜
入り口ゲートを入ると正面に慰霊塔がそびえ立っている。ほとんどの観光客が最初にこの塔へ行ってから敷地内を歩いているが、その重々しい空気に気後れして先に遊歩道を進むことにした。歩いて行くと椰子の木がある。聞くとこの葉に繋がる茎の部分を処刑に使ったとのこと。堅くてギザギザののこぎりのような茎を囚人の首に当てて、息絶えるまで引いたそうだ。一気に首を切り落とすのではなく。
その先にある木は乳幼児を殺害するために使われた。トゥールスレンにあった(生還者が描いた)絵のように子供の足を持って木にたたきつけたのだ。
その近くには「魔法の木」と呼ばれ、最後の時を迎える犠牲者たちの苦しみの声をかき消すためにスピーカーを吊るし大音量を流した木がある。
さらに歩いて行くと地面の土の上に何やら小さな白い物が落ちている。人間の歯だ。
敷地内のあちらこちらに大きな穴があり「ここで首のない166の遺体が見つかった」などと説明する看板が立てられている。
最後に慰霊塔まで戻って、線香の煙がもうもうと漂う階段を上りガラス張りの塔内へ入るとそこには数え切れない骸骨とうち捨てられた衣類が置かれてた。
最初にここに入ればグロテスクなイメージが大きかったかも知れないが、敷地内を歩き、犠牲者達の最期の様子を知り、その叫び声を聞いた(気がした)後だったので、余計に悲しく心が重くなった。
(2010年9月 カンボジア・プノンペン)
写真・文: 城戸可路